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2012年12月4日 不世出の存在

ゴンが引退を表明しました。

札幌に移籍してからは怪我に泣かされ、碌にプレイも出来ない状態でしたので、
近々そうなる事は致し方ないかと思っていましたが、
それでもやっぱり突然な喪失感に襲われます。

方々で語られてるように、4 試合連続ハットトリック、最速ハットトリックで、
ふたつのギネス記録を保持していたり、
J1 通算最多ゴール記録、J1 出場最年長記録、
日本人ワールドカップ初ゴールといった、
とにかく記録ずくめの実績がある、
それだけでもレジェンドと言っていい選手でした。

しかし記録よりもまた、記憶に残る選手でした。
92 年のダイナスティカップ韓国戦、アジアカップ北朝鮮戦など、
日本代表がひとつ上のランク、ステージに昇る切っ掛けとなった試合でゴールを決め、
ドーハでは敗れたイラン戦での終了間際の角度のない位置からの静かなゴール、
追い込まれた北朝鮮戦でのゴール、
そしてあのイラク戦の勝ち越しゴールなど、
とにかく記憶に残るゴールの数々を決めてきました。
とにかく苦しい時に点を決めてくれました。

ドーハでイランに負けて意気消沈していた私も、
追いつくのも無理なパスをスライディングで拾い、有り得ない角度から決め、
その異様な光景に見る者全てがあっけにとられ、歓声が全く沸き起こらなかった、
という意味での、あの、静かなゴール。
そのまますぐにゴールに入ったボールを抱えながら、
センターラインまで味方を鼓舞しながら戻る姿を見て、
一条の希望の光を見た想いでした。
「大丈夫、俺達にはゴンがいる。」
そう思って最後まで諦めず応援出来たものでした。

次のワールドカップ予選もまた筆舌に尽くしがたい苦しい展開でしたが、
当初中山は代表からは外されていて、韓国戦などは放送席にいました。
完全に過去の人となっていました。
その時のチャ・ブンクン監督の試合後のインタビューに対し、
「そうは思いませんけどね。ムカつきますね。」
と放送席で噛み付いていた事が思い起こされます。
しかし紆余曲折を経た最終戦、カザフスタン戦で、
カズの出場停止により急遽代表復帰。そしてそこでまた大活躍。
自分のユニフォームの下に 11 番のユニフォームを着て、
ゴールを決めて、それを見せるパフォーマンスも忘れられません。
そうして見事に最前線へカムバックしました。

そしてジョホールバルの先制点。
キーパーに当たりながらもゴールに入っていく軌道が、
現場にいた私の視点からは少し異質に見えて、
一瞬どうなったか分からなかった事、でも結果入ってた事、
とにかく入ってたという事で大歓喜、というのを覚えています。

日本で開催されたダイナスティカップの韓国戦のゴールも印象深いです。
実は私はこの時ダブリンにいて、前日には韓国人の友人に、
「明日、俺等はお前らをぶっ倒す。」とパブで絡んだりしてました。
彼の地から試合が観られなくてソワソワしながら、
結果の一報を聞いた事が忘れられません。
中山が決めて、勝った、と。
その後パブでまたその韓国人に勝ち誇って絡んだのは言うまでもありません。
実際に観ていない試合なのにも関わらず、
私の心の中には、そういう形でも、ゴンゴールが刻まれています。

最後に生で見たゴンゴールは、トルシエのデビュー戦である、
長居で行われたエジプト戦のものでした。
パスを受けた中山がペナルティエリアの中で倒され得た PK を決めたものですが、
印象的なのはそのパスを受けるまでの動きとトラップです。
中山がすごいのは、名波も言っている様に、
30 過ぎてからもドンドン上手くなっていった事です。
そのためには年下だろうが何だろうが関係無く、「教えてくれ。」と教えを請い、
ボールを受けるための動き方を研究し、常に向上心を持って、
サッカーに対して常に真摯で、成長するために日々の練習に取り組んでいたそうです。

中山と言えば泥臭いゴール、という印象が世間では強いかもしれませんが、
私は意外とそうでもなくて、歳を取るほどに積み重ね始めたゴールは、
ジュビロ全盛期という事もあってか、中々に洗練された綺麗なゴールの印象も強いです。

「俺が生意気だってぇ?100 年はえーよ!!」
とテレビカメラに笑いながら吠えていたオフトジャパン時代。
澤登をいじめながら、カメラに向かって絡む姿。
ジュビロの試合後、イエローサブマリンのメロディーで、
なっかや~ま隊長ゴンゴール ゴンゴール ゴンゴール
というチャントに合わせ、サポーターに向かってそれを仕切るかのように踊る姿。
もう、そんな選手は現れようが無いでしょう。
そんな選手なのに、記録にも記憶にも強烈に残る不世出の存在、中山雅史。

ボロボロの体で、それでも未練タラタラと言いながら引退を宣言。
間違いなく、まだまだ上手くなりたいと思っている事でしょう。
本当にお疲れ様でした。そして、数々の思い出を本当にありがとうございました。
まずはゆっくり体を休めて、酷使し続けた全身を労って下さい。

ウォーナカヤマッ ウッ!ウッ! ナカヤマナカヤマゴンゴールー


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