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12月29日

残された人間は、前に進むしかないんですよね。
わかってても兄さんのそれは私には酷すぎて、
毎日病的なくらい臓器が沈んでいるような感覚を引きずっています。

全く、ずるいもんです。
公言してた通りの生き様なんですから。
つらい人生でも一緒に歩いているから頑張れるのに、
お先に失礼、って急にいなくなったら、こっちはどうすりゃいいんですか。

今頃、地獄の釜で焚かれて酒でも抜いてるんでしょうか。
いや、兄さんは悪人ではないので地獄にはいないでしょう。
兄さんは善人ですよ。ろくでなしの善人です。
思う存分、飲んでください。
近頃私はこの世の酒を兄さんの分まで頂戴してます。
また酌み交わす時には、そちらの旨い酒を教えてください。
私が地獄に堕ちなければ、ですが。

この前、兄さんが好きだった場所で、好きだった時間帯に、
好きだった酒を飲んできました。
私の前にもう一つ、兄さん用のグラスに一杯つぎながら。
その時、思ったんです。もし兄さんが目の前にいたら、
どんなことを話すんだろうな、と。
多分、黙って二人で夕日をみていたと思います。
そう思ったら、兄さんと一緒に飲んでいられました。
兄さんと飲みたくなったら、またあの場所のあの時間に飲みに行きます。

兄さんはきっと、泣くやつなんて誰もいないと思っていたでしょう。
でも、それは違いますよ。
少なくとも私はひどく泣き崩れましたよ。
友人の方々も参ってしまってますよ。
兄さんにとっての財産は、こちらでまだまだ頑張って行きますよ。

また会うときまで。



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