2013年6月20日 機会損失

勿体ない。ただその一言。

公式戦で強豪国、伝統国に対して善戦するのは今までもあった事で、
引き分けまでだったらフランスやブラジルにだって過去にはありました。
でも勝ちきれない。その経験が無い。

今回はその成功体験を積む千載一遇のチャンスでした。

何故こんなに圧倒できたか。
それはもう、ただひたすら、イタリアのコンディションが最悪だったから。
それに尽きる。他にも理由は勿論あるけど、それが大半を占めるでしょう。
確かに日本も強くなってますし、ブラジル戦の弱気なメンタルも克服できてたし、
コンディション調整も出来うる限りの準備をして、イタリアを上回りました。
確かにそういったマネジメントも考えると、乱暴な言い方をすれば、
点数の数字以外は全てにおいて上回った、と言えるかもしれません。
でも、それを加味したところで、このような超絶展開になったのは、
偏にイタリアが史上最悪の出来だった事が原因です。

ある程度やれるというのは、予想してました。
ブラジル戦後にメンタルの切り替えとフィジカルの出来うる限りの調整をすれば、
イタリア相手でもそこそこ互角にはやれるはずだと思ってましたし。

試合の間隔が日本の方が一日多い事も有利に働きました。
意外な蒸し暑さと湿気という悪条件も、両方にとって影響があるのは確かですが、
影響度で言えばイタリアの方がより重くのしかかり、
日本側にやや有利に働いたと言えるかと思います。
悪コンディションの中でも、日本はアドバンテージを握っていたわけです。

でも、これだけが理由では無いでしょう。
コンディションだけなら、互角に渡り合うくらいなもんです。
それがなぜ圧倒できたか。その大きな理由は単純に、日本をなめてたからです。
何人かいい選手がいて、海外にも出てプレイしてる選手も多い、
という事は漠然と知ってはいたものの、ブラジル戦の結果もあり、
伝統国ならではの傲慢さが悪い方向に働き、警戒心を薄め、
集中力を欠いたまま、ボヤッと試合に入っていたわけです。
香川の二点目が入った時も、ベンチは笑顔で、悲壮感の欠片もありませんでした。
こういった緩くてぬるい空気が、イタリアには蔓延していたわけです。

こんなチャンス、めったにありません。

仮に既に成功体験を積んでいたとしたら、一失点目は無かったでしょう。
あったとしても先に三点目をきめていたでしょう。
そうでなかったとして同様に泥仕合になったとしても、
先に四点目を決められたはずです。
世界の中での格が、ひとつ上のステージに上がり、
トップランクの伝統国、ワールドカップ優勝経験国に対しても、
条件さえ揃えば、勝つ事も現実的な事象として見据える事が出来る。
そんなメンタリティを得られる、千載一遇のチャンスだったわけです。

ただ健闘した、支配した、圧倒した、だけでは得られないものが、
結果を残す事で得られたわけです。
更には次のステージの経験も積めたわけです。
そこを乗り越えられなかった。また停滞してしまった。
それが残念でならない。
一度乗り越えてしまえば、今後同じような状況に陥った時も、
冷静に振る舞えるレベルになれたかと思うと、
ただひたすら、その機会損失が勿体ない。ひたすら勿体ない。

ザックが試合内容に満足している風な事を言っていたり、
意図はわかるものの、流れから考えると大いなる謎采配が相変わらずだったり、
そういった問題は問題で現実としてそこにあるわけですが、
もう、そんな事も小さい問題と思えるほど、取り損なったものが大きくて、
正直ブラジル戦よりも失望感が強いです。

ただ、選手はこの結果を強く重く受け止めているのが救いです。
このレベルでの一発でやられる怖さを痛感しながらも、
自分たちの目指すサッカーも通用するという実感も得た事で、
一年後の本番に向けて、どう準備するか。
それを逆算で考えられる事が出来る様になったのが、最大の収穫でしょう。
成功体験は得られませんでしたが、
失敗から学ぶ材料、それも強烈な痛みを伴った物が得られたわけです。

単なるワールドカップのプレ大会、予行演習なんかじゃありません。
まだまだ挑戦者の身には、貴重な転機となりうるステージです。

取り損なった経験が、来年の成功体験に繋がる事を祈ります。
そうでなければ、海外での評価が上がった事以外は、
本当にただの損失になってしまいますし。
この試合が転機となったと、成功体験を得た時に言える事を期待しますし、
この代表なら出来る、為し得ると信じています。